株式会社東京三光さんは長年DiGiCoのコンソールを使用していただいており、この度2台のQuantum338 with KLANG を導入いただきました。横浜機材センターにお邪魔して、音響エンジニアの松永哲也氏と阿部栄一氏、古賀巧己氏にお話を伺いました。
株式会社東京三光
音響部部長 システムエンジニア
松永哲也氏
●DiGiCoとの出会い
松永氏がDiGiCoコンソールを使い始めて10年ほどになります。初めて導入したのが「SD7」。当時のことを振り返っていただきました。
松永氏が初めてDiGiCoコンソールを知ったのは、デジタルコンソールへの移行期、代理店からの紹介だったそうです。「当時のD5は、金額的に厳しかった。マルチケーブルや周辺機器が全部凝縮されてこのコンソールになっているんだけど、高額すぎて会社が理解してくれなかった。」ということで導入には至らず、音に関してもほれ込んだというほどでもなかったらしく、DiGiCoからは遠ざかって行ったようです。その後代理店がヒビノになり、SD8が出て、SD-Rackが出てきます。このSD-Rackになってからは「これ良い音してる」と感じるようになったそうです。
そしてフラッグシップのSD7が登場。松永氏も順調にお仕事をこなしていく中で、これまでのコンソールでは対応できないかも、という案件に出会いました。100ch以上のインプットと多くのアウトが必要で、なおかついろいろなことをやらなければいけない要素がある。条件に合うコンソールを探していく中でSD7にたどり着いたそうです。「いろんなことがカスタマイズできて自由にできるっていうのが魅力でした。一度音も聞いてみたくて試しに大規模な現場でないところで使ってみると、音も良かった。いろんなことができてなおかつ音がいいという、この2つの要素が揃って『これはぜひ欲しいコンソールだ』ということで頑張りました。(笑)」
その現場というのが京都の平安神宮での野外コンサート。平安神宮は街中にあるということもあり、出力制限がかけられています。出力90dBという制限のもとでどれだけクリアな音が届けられるか、ということも課題でした。「SD7を現場に持って行った時にすごく音がきれいだった。音のきめ細かさ、解像度の高さとか、これだったら90dBでできるな、と思ったんですよ。音量制限もありながらちゃんと音のバランスも良くとれていた。会場の雰囲気、使ってる音楽とかいろいろマッチして、すごくよかった。音がきれいな卓という印象がますます強くなりましたね。」と、この現場がきっかけとなり、今では東京三光様にQuantum7を筆頭とするDiGiCoのコンソールが多く集まることになりました。
▲圧巻! スペースいっぱいに並んだDiGiCoのコンソールたち
東京三光さんがお持ちのDiGiCoコンソールの一部。
並べられなかったSD10などほかにもあります。
Quantumになってコントロール部と処理部は別々のFPGAを使っているのでそれぞれの処理スピードも上がり、リスク分散もSDシリーズ以上に高まっています。Quantum特有のNodalやMustard Processing、Chilli6とNaga6が追加されたSpice Rackなどの機能についてうかがうと、「面白い。いろいろ使ってます。」と即答。
「Quantumになってからは、ボーカルで一台アウトボード入れるかなってくらいで基本DiGiCoの中のダイナミクスを使用しています。MustardとSpice Rackがあれば、ばっちりです。チャンネルインプットで使用してます。ボーカルの人数が多い時は最終的にグループでChilli6を入れます。マルチバンドの時もケースバイケースです。ポイントポイントでピーキーなところを落としたいところはNaga6を使って。マルチバンドは楽器が多いかも。ボーカルはコンプとダイナミックEQで処理することが多いかな。」
また、Quantumのモニター卓としても優れた性能を持っていることを高く評価していただきました。「さすがにまだQuantumをモニター卓に回すわけにはいかないんだけど、モニターマンにしてみればいろんなことができちゃうスーパーマシンだよね。」
「アーティストから自分のところだけここの音をもうちょっとたたいてくれないかっていうリクエストが来た場合、今それをやろうとするとチャンネル1つ割かなきゃいけなくなるんだけど、チャンネルを割かずに操作ひとつでできるのはとても大きい。例えば、ドラマーでゲート嫌いな人がいたとする。自分のイヤモニだけはゲート外して自然な音を返してくれって言われてもQuantumなら素直にどうぞって渡せちゃうし、ドラマー以外の人にはゲートがかかってタイトな音でモニター送りができちゃう。しかもこれ、一気に何chも同時にできるでしょ。コンプも一緒で、例えばギターなりベースなり、自分のところはアタックうるさいから何とかしてって時にすんなりできちゃう。ほんとスーパーマシンすぎる。」
「ゆくゆくはモニター卓にって考えなくもないけど。でもな~、もうちょっと安ければモニター卓として回しやすいんだけどね。」とスパイスの利いたコメントもいただきました。
● SD-Rackの32bitカードについて
「いい音が出ている」と評価していただいたSD-Rackには、32bitのハイビットレートの入出力カードがあります。このカードについて伺うと、「いいですね。SD-Rackが出てきたときは、ミッドレンジがくっと締まってる感じで、音が混じって一緒になった時にバラバラにならなくてしっかりまとまってくる。そんなイメージだったんですけど、32bitになった時にはそこからもっとエッジが立って音の粒がちゃんと見えてきましたね。」
松永氏が求めるコンソール像は「音量を出してなんぼ、というよりは、音の解像度がどれだけあるか。」というものだそう。「どれだけ音が分離するか、一個一個音が聞こえてほしい、小さい音、埋もれている音も聞こえてほしい、これって聞こえてなくない?っていうのもちゃんと聞こえてほしい。爆音系でも団子になっているんではなくてその中で一個一個しっかり聞こえている。大きくても小さくてもどんなパワー感の中でもちゃんと音が聞こえる、っていうようにしたいんだよね。それで、32bitカードを使ってみたら、すごい。ちゃんと聞こえてくる。人によっては32bitだとばらばらにうるさく聞こえるから落ち着いて聞こえる24bitのほうがいいっていう人もいる。96kHzでやらずに48kHzでやる人もいる。人それぞれですけど、僕は96kHzで32bit、とにかく高解像度!」という明確な意思表明をいただきました。
32bit ADコンバーター搭載 マイクプリアンプカード MOD-SDR-ADC32B |
32bit DAコンバーター搭載 アウトプットカード MOD-SDR-DAC32B |
●心躍るHTLのフルカラーLED
DiGiCoのコンソールのQuantumシリーズとSD12には、フルカラーLEDでチャンネルを簡単に識別できるHTL(Hidden Till Lit)が備わっています。これについて伺うと「いやー、もう、大好き。」と2回目の大好きをいただきました。
「初めてSD7を見たときにすごくきれいだと思いましたね、色合いが美しい。ワクワクする。見た目大事ですよ、卓の前に立った時のモチベーションがまったく違う。」
「暗い会場にあってフルカラーで輝いているのは、人によっては派手でまぶしくて邪魔だなって感じるかもしれませんが、逆に僕はすごくワクワクする、かっこいいと思う。それがアナログからデジタルに変わった大きな違いのひとつかもしれませんね。一昔前の言い方だけど、未来的なものを感じてしまいます。触ってみたい、やってみたい、と思わせてくれるデザインですね。これを見てこの仕事にあこがれてくれる人がたくさん出てくるといいな、と思います。」
本日はお忙しい中ありがとうございました。
機材 | ブランド名 | 製品名 |
デジタル・ミキシングコンソール |
DiGiCo | Quantum7、SD5、Quantum338 with KLANG、SD10、SD10-RE、SD12-96、SD11i |
I/O BOX |
DiGiCo | SD-Rack、SD-MINIRack、Orange Box |
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