■旧店舗からの移転、新店舗に至るまでの歩み
川名氏(Planet K プロデューサー)
川名氏 旧店舗のPlanet Kは現在の店舗から徒歩30秒くらいの場所にありました。地域の若者やアーティストに支えられ、23年間にわたって地元のライブハウスとして運営してまいりましたが、建物の契約の関係でその場所での存続ができない状況となり、2022年7月に残念ながら閉店となりました。
その後、移転先を探していたところ、前の場所と非常に近い場所で、かつ条件も整った新店舗を奇跡的にも契約することができました。
そして、2022年10月に新組織を立ち上げ、新店舗での構想をスタート。旧知の間柄であったトモカ電気株式会社プロオーディオチーム前原氏に相談の上、様々な機材を検討。2023年4月に着工し、2023年9月に復活を果たしました。
■新たなライブハウスの新たな機材
川名氏 新たなライブハウスで運用する機材として考えていたのは、このサイズのライブハウスでも解像度の高いサウンドを届けること。そして若者にも一流と同じレベルの機材を体験してもらいたい、ということです。そうすることで多様化する音楽の発信の中でもライブの価値を高められるのではないかと思っています。
そこでミキシングコンソールとして選ばれたのがAvantisでした。
宇都氏(Planet K テクニカルチーフ)
宇都氏 Avantis導入よりも前、持ち込みのイベントなどで運用するためにSQを導入したのがALLEN & HEATHとの最初の出会いです。その時は同じクラスのコンソールと比較すると音の密度が比べ物にならない、と好印象を受けたのが大きかったですね。
川名氏 元々ALLEN & HEATHの音質は自分が若いころから慣れ親しんだブリティッシュサウンドのイメージに近いこともあるのかもしれません。いずれにしてもAvantisの音は粒立ちがいいが、混ざり方も心地よい、というのが若いスタッフも含め、全員の評価でした。
コンパクトながら96kHz、64ch、42バスのキャパシティーを備えたAvantis。Planet Kのキャパシティーに余裕をもって対応するだけでなく、極めて解像度の高いサウンドをオーディエンスに届けます。
次に音響エンジニアの横木氏に実際の運用に関してお聞きしました。
■ステージ上の入力数が増えたことによる汎用性
横木氏(Planet K 音響エンジニア)
横木氏 Planet KではAvantisと共にステージ側にI/OエキスパンダーGX4816を配置して運用しています。卓とエキスパンダー間は1本のケーブルで完結できるため、非常にシンプルな配線でシステムを構築できました。 旧店舗での入力数は32chでした。ジャンルによってはケーブルの差し替えが必要でしたが、48入力と増加したため、余裕があります。現在はライン入力の機器も多く、持ち込みのワイヤレスを入力する必要もあるため、入力数が増えたことは大きなメリットです。
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ステージ側のGX4816(左)とAvantis専用に設計されたコンソールラック(右) |
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■今後の拡張性を期待するDanteカード
横木氏 まだ活用しているわけではないのですが、AvantisにはDanteカードを装着しています。AvantisはローカルI/Oが少ないため、I/Oの拡張用としての働きを考えています。また、マルチトラックレコーディングのニーズも増えているため、Danteカードを導入していればPCさえ用意してもらえればデータを渡すこともできるため、今後のニーズにも対応できます。
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Avantis背面パネル。左の拡張スロットにDanteカードを装着している |
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■Avantisの音質と操作性
横木氏 音を聴いての第一印象は音の解像度が圧倒的に高い、と感じました。エッジが際立ち、お客様からはハイが特にきれいといわれます。音の輪郭がはっきりしているため、フェーダーコントロールで音の奥行が変わる、という印象です。従来のミキサーは単純に音量の上下であったのが、Avantisでは音像が前に出る、引っ込む、というイメージであるのに驚きました。
操作性に関してはゼロからのスタートだったため最初は大変でした(笑)。昨年の9月から運用を開始しているのですが、今は全く問題ありません。Avantisはできることの幅が非常に広いため、やりがいをすごく感じます。それが一番気に入っているポイントかもしれません。ダイナミックのエフェクトや空間系のリバーブなどエフェクト関連だけでも膨大な量が入っています。それらを自由に使用できることはメリットですし、まだまだ突き詰めていくことがたくさんあることは自分との戦いでもあり、モチベーションが上がります。
■Planet K次なる展望
横木氏 どのようなイベントが入るか、にもよるとは思いますが、多様なジャンルに対応するには入出力のキャパシティーや、機能性などが求められます。Avantisを含めPlanet Kを構成するすべてのシステムはある程度どんなニーズにも対応できると感じています。イベンターからのこんなことやってみたい、といった今までは難しかったニーズにも応えていければと思っています。
川名氏 新店舗のスペックはこの規模のライブハウスとしてはオーバースペックだと思います(笑)。なので、音響面としてはかなり満足しています。システムに妥協をしなかったのもすべてはライブシーンを盛り上げていくため。前にも申しましたが、演奏する若者にもプロフェッショナルな音と機材に触れてもらう事がライブハウスとしての使命でもあるし、音楽シーンを成長させていくと思うのです。
旧店舗の閉鎖からミュージシャンたちの熱い応援を受けて復活を果たしたPlanet K。吉祥寺の音楽シーンを守り続ける気概と共に音響を極めていく飽くなき探求心を感じました。Planet Kは今年25周年を迎え、新たな伝説を築き始めています。
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左から宇都氏、横木氏、川名氏、納入事業者であるトモカ電気株式会社前原氏 |
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機材 |
ブランド名 |
製品名 |
デジタル・ミキシングコンソール |
ALLEN & HEATH |
Avantis |
I/Oエキスパンダー |
ALLEN & HEATH |
GX4816 |