共創空間SALONとはどのようなスペースであるのか教えてください。
広岡氏:SALONは恵比寿ガーデンプレイス センタープラザの2階、PLUS DESIGN CROSSの入口にあたるスペースです。SALONを挟んで東西にオフィスが分かれており、2つのエリアをつなぐ空間となっています。PLUS DESIGN CROSSのコンセプトは共創を掲げており、東西のオフィスだけでなく、社外の取引先、さらに地域の皆さんと繋がる共創空間と考えています。地域の皆さんというのは実際この施設に入っている他の企業様が中心にはなりますが、プラス株式会社の認知度は一般的にはまだ高くはないと考えているため、周知を図るためにも恵比寿ガーデンプレイスの商業施設内にオフィスを構えました。社内と社外をつなぐ人と文化の共創スペース、それがSALONです。
東西にオフィスをつなぐ共創スペース「SALON」
緑も多く、自然光もたくさん降り注ぐ屋外のような空間ですね。
広岡氏:こちらのスペースはオフィス空間とは異なり、天井がガラス張りで太陽の光がたくさん入ります。日本の各地で育った多品種の木々を配置し、心地よく開放感あふれる場になっています。こちらはミーティングやイベントだけではなく、執務エリアとなるインフラも整えているため、フリーアドレスの実務スペースとしても使っています。少し気分を変えて仕事に集中したい場合などにもいいかもしれませんね。
このエリアは商業施設のある1階、地下1階とエスカレーターで直結した形となっています。厳密にオフィスが区切られていない構造はかなり珍しいと思うのですが、問題点はあるでしょうか?
広岡氏:共創をコンセプトとして掲げている、という事がこの構造の一番の理由です。SALONは共創というコンセプトの象徴の場であり、人や街とつながるタッチポイントとなる空間のため、あえてセキュリティを設けていません。SALONの左右に拡がるオフィスへの入り口にセキュリティを設けていますので問題はありません。
共創空間にBECのスピーカーをなぜ導入したのでしょうか?
広岡氏:まず、移転前のオフィスでの話になるのですが、朝礼やミーティングを行うラウンジという空間がありました。そちらの拡声用のスピーカーを探していたところ、ヒビノスペーステックさんからJBL PROFESSIONALのEON ONEというポータブルPAシステムを紹介され、採用に至りました。EON ONEはコンパクトで、充電式で取り回しもよく、見た目もよいので気に入ってていたため、移転後もそのまま使おう、となりました。ですが、移転後のSALONスペースに配置すると、移転前に比べてかなり大きな空間であったことや、空間の構造によるものなのかマイクで拡声した際に音がこもってしまう。そこでヒビノスペーステックの音響調整担当の方に相談したところ、調査の結果、空間に対して音が足りていないこと、アーチ状の天井構造などの理由で音がこもりがちになることが判明しました。
また、せっかく緑を多用した空間にしているのに対し、流していたのは無機質なBGMであったため、もっと自然な空間にしたいという要望も多くありました。
BECはどのようにシステムを組んでいるのでしょうか?
広岡氏:現在、SALONの東側のスペースのみ設置が完了しているのですが、天井の手前と奥側に2本ずつ、手前の椅子の下に2本の計6本を設置しています。非常に細く目立たない外観のため、設置していること自体気づかれないことが多いです。普段はプログラムタイマーによる制御で始業から終業まで環境音を流していますが、イベントなどを行う場合はEON ONEをマイクのメインの拡声に、補助的な拡声としてBECからも拡声を行っています。
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SALON東側半分のスペースが今回の改修エリア。南北の天井に各2本、北側の椅子の下に2本のBECコラムスピーカーが見えない形で設置されている。
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実際にBECを採用してどのようなメリットがありましたか?
広岡氏:まず、環境音を流している通常時はより自然な空気感を演出できていると思います。自然光や緑の効果がより高まり、まるで屋外にいるような空間になりました。目立たない外観のため、環境音の再生にはもってこいです。そしてイベント時の音のこもる感じがほとんどなくなりました。天井がアーチ状のせいか、天井に設置したBECからの音が上から拡声するシーリングスピーカーのような効果になり、エリア全体に声が届くようになりました。また、今まではポータブルPAシステムのみの運用であったため、設定が元に戻されていなかったり、使う都度設定をやり直すことがストレスに繋がっていましたが、環境音の切り替えはスイッチで行え、イベントを行う場合の設定もしっかりマニュアル化されているため、非常に使いやすく好評です。
非常に細く、目立たずに設置できるBEC AkostikのICシリーズ。長さ50cmから120cmの4モデルをラインナップ。白/黒の2色で展開するほか、特色での塗装も可能。
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音響機器を制御するラック。スピーカーを駆動するパワーアンプのほか、音量コントロール、プログラムタイマーなどをマウントしている。
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今後、さらにアップグレードしていきたいポイントはありますか?
広岡氏:今回の改修では東西の片側のみを完了した、という形なので、もう片側も設置を進め、SALON空間全体のシステムにしていきたいですね。また、環境音に関してもやりたいことは色々あります。弊社が関係の深い地域の環境音を音源として使用したり、四季や時間に応じた環境音にしていくなど、アップグレードしたい様々な試みがあります。
また、今回のプロジェクトを通じて新たな試みにもつながっています。オフィス空間の提案では、「モノ」だけでなく「コト」の提案も重要な要素です。そこで視覚だけでなく聴覚、触覚など五感に訴える新たなオフィス家具をヒビノスペーステックさんと共同で開発していく試みが始まっています。これも他社との共創につながった例といえるのではないでしょうか。
なるほど、素晴らしい共創ですね!
広岡氏:フリーアドレス化が進んできた昨今、自分が仕事をしている場所でミーティングがうるさく集中できない、など建築音響としては解決の難しい問題が表れています。また、日本人の特性上、非常に静かに仕事をするために、小さい音でもノイズとして感じてしまう、、。他のエリアに音が漏れにくいスピーカー内蔵の家具など新たな家具の開発はもちろんですが、今回のように環境に音を足す、ということでより良い仕事の環境づくりをする、というのは非常に有益で今後のビジネスモデルにもなりえるケースではないかと思っています。
非常に興味深いお話をありがとうございました。