▲ CLUB CITTA'を象徴する星形のトラスとDiGiCo「Quantum 338」
──今日はお忙しい中、ありがとうございます。早速ですがQuantum 338導入の経緯から教えてください。
山室 コンソールは、2002年のリニューアル時の移転当初はアナログ卓でしたが、2012年にDiGiCoのデジタル・ミキシングコンソール「SD8」を導入しました。その後、2019年にMaDi-Rackの生産中止の発表を受けSD-Rackに更新することになり、音のグレードアップを狙って32bitカードも導入。そして、今年6月中旬にQuantum 338を導入しました。
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▲Quantum 338と足元に置かれたSD-MINI Rack。
SD-MINI RackもI/Oのすべてが32bitカード |
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▲ステージ袖のSD-Rack すべて32bitカードを採用 |
──CLUB CITTA’の大きな強みになりそうですね。
山室 そうですね。導入を決めるまで、いろんな人に聞いたところ評判がとても良かった。海外アーティストからの問合せでもQuantum 338を使いたいとオーダーされるので、弊社にも入れたいという強い思いがあって実現できました。
──操作性についてSD8と大きく変わった点はありますか?
山室 いろいろとできることが増えたのでとても面白いですね。
▲ 舞台制作事業部部長 山室 亨氏
──例えばどんなところに面白さを感じていますか?
山室 Mustard ProcessingやSpice Rackが加わり、EQもパラメータが増えて、音を処理するポイントが増えたので、楽しいですよ。
──お気に入りは何ですか
山室 Mustard Processingが気に入っています。特にdbxのような感覚のするヴィンテージVCA、1176っぽい掛かり方をするコンプも気に入っています。搭載されている4つはどれも好きですね。
また、コンソールのレスポンスも早い。SD8も良かったのですが、Quantum 338は音を作っているときに、EQやコンプを簡単に掛けられます。
▲ Mustard操作画面
──導入してからどれくらい経ちましたか?
山室 6月の中旬だから、まだ1ヶ月ちょっとです。
──でも、そこまで使いこなせているのですね。
山室 SD8で慣れていたので、すんなり入れました。操作性に対してはまったく何も問題ないですね。Quantum 338は操作がわかりやすいと、アナログ好きな年配オペレーターが話していた、というのを耳にするくらいですので。
──オペレーターからの反応はいかがでしょうか。
山室 CLUB CITTA’は、約80%が乗り込みなのですがベタ褒め状態です(笑)。特に音の評判が良く、とても素直な音で自分の思った通りの音がすぐに出せるとおっしゃっています。
僕も実際に触っていて、入ってきた音に対して忠実な印象を持っています。それに何かパワー的には3倍くらい違うイメージがあるのですが、そのパワー感だけが前面に出るのではなく、素直な音なのです。例えば家でオープン型ヘッドホンを使って聴いてきた曲をQuantum 338で出しても、イメージがあまり変わらない。もちろんライブハウスで出る音と、スタジオでレコーディングされた音は違いますが、音像がとても近くなりました。そこはすごいなと思っているところです。たぶん音の分離や解像度がとても高くなったのでしょうね。
また、弊社では海外招聘もしていて、イタリア人のオペレーターが、リハを終えてから「音がすごく良い」と何度も言っているよと、プロモーターが教えてくださいました。
CLUB CITTA’は、ラウドロック的なバンドが演奏するライブハウスというイメージが強いんです。だから、大音量を出すバンドが多く、SD8では良い意味で暴れている感じの音も出せるという感覚がありました。その音を知っている人もQuantum 338を聴くととても良くなったとおっしゃいます。
あとはシーケンサーを使うバンド。これまではシーケンス関係の音は埋もれてしまうから、どう処理しようか考えながらオペレートしていたのです。それがQuantum 338はフェーダーを上げるだけで、きちんと聴こえるようになりました。
──Quantum 338を導入したとき、システム・チューニングはされましたか?
山室 僕も必要かなと思い測定したのですが、何も変えるところはありませんでした。
──DMIカードは活用されていますか?
山室 Danteのカードを入れています。SD8時代はライブレコーディングをMADIで録って、モニター卓のDanteで録っていたことがありました。それが、Quantum 338にDanteのカードが入っているので、これだけでライブ録音が成立するようになりました。
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▲Quantum 338のリアパネル。オプションのWaves端子と、64in/out@48kHz/96kHzのDante対応DMIカード「MOD-DMI-DANTE2」を装填 |
あとはDanteで使用できるVSTプラグインが、どのくらい出てくるのかに注目しています。乗り込みのオペレーターも、プラグインを使いたいと持ってきますからね。今後はDanteを使って、VSTプラグインを使いたいというオペレーターがもっと増えそうな気がしています。なにより自分自身が使ってみたいですからね(笑)。プラグインがPAコンソールで使用できるようになるのは、とてもわくわくしています。