「本番中は生のオーケストラなので、音楽は指揮者に合わせればいいんですけど、俳優は同じ曲を歌っていても人によって癖があるので、それを覚えてタイミングを計るというか。手に汗握る感じです。」と語る渋谷氏。本番のオペレートはかなり緊張感を伴うとのこと。「いつもコンソールの縁をタオルで拭いてるよね。」と吉澤氏と顔を見合わせて笑う渋谷氏。毎日同じ演目でも、少しずつ違ってくる生の舞台だからこその緊張感をも楽しんでいるご様子です。
本番のオペレートを担当できることについて渋谷氏にうかがうと、「すごく幸せ」と、感慨深げに答えてくださいました。世界的に有名な舞台のオペレートを担当しているという喜びやプレッシャーもありつつ、それ以上にお客さんの反応にいつも救われているという。特に、お子さんたちの笑い声や楽しそうな様子を見ると、「ちゃんと伝わっていると感じられてうれしい」と語ってくださいました。
気に入っている機能をうかがいました。
渋谷氏:ミュージカルでは同じキャストを何人もの俳優が演じることが多いのですが、このコンソールには各俳優に合わせた設定が保存できる「Player」機能があります。週替わりの変更も俳優の名前を選択するだけでEQやダイナミクスがその俳優仕様に自動で一気に切り替わるので、すごく便利です。
吉澤氏:僕はマクロが好きです。オペレートをしながら手が届くところにスイッチが配置されており、回線の切り替えや、周辺機器のオンオフ等、様々な機能を盛り込むことができます。まさに痒いところに手が届くという感じです。
森下氏:あとは、リハーサルの時に使う「Copy Audio」。「リハーサルモード」と呼んでいますが、これは絶対必要。
渋谷氏:チャンネルソースを録音音源に切り替えられるので、バーチャルのような感覚で練習できます。
吉澤氏:「Alt Input」も助かります。メインキャストにつけているワイヤレスマイクが何らかの原因で使えなくなったときに、パッチの切り替えなしでバックアップマイクに切り替わってくれます。音が途切れるのが一番怖いので。
森下氏:よく利用してるのは、「Auto Update」機能。変更したいシーンの微調整をキューごとに少し作業すれば、全体が更新できます。グループでここからここまでというのもできるし、単独でも全体を変更することもできる。この辺は、良く考えられてるなって思いますね。もっと言うと、ドラムの電子パッドの一つを演者がたたけばキューみたいなトリガーがいろんなところにあって、それがすべてオートメーションで動作するところがすごい。
ローカルの入出力端子はほとんど使用していて、AES、MIDI、OSC、GPIなどあらゆる方法で送受信しています。これだけ多くの信号を表示するシーンの画面も素晴らしい。全部のシーンで自分が何を動かせるとか何かもらうよ、というのが一覧表示されるのもいい。一目で見られてわかりやすい。
反応スピードも早くて、全く気にならない。コントロールサーフェスとしては、間違いなく最優秀です。
▲ (左から)森下氏、吉澤氏、渋谷氏
▲舞台を支えてくれているスタッフの皆さんと
(前列)吉澤氏、(後列左から)石原愛子氏、中尾彩氏、渋谷氏、仲井風美氏