高橋幸宏の呼び掛けにより集結した、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井が、2016年1月、METAFIVEとしてのファースト・アルバム『META』をもって、再始動しました。続いて2016年11月にはミニ・アルバム「METAHALF」をリリース。レッドブル・スタジオ東京で行われたスタジオライブで、METAHALFに収録されている”Chemical”を一発録音したミュージックビデオが公開されました。
このスタジオライブの一発録音を手がけたのは、バンド系を中心にこれまでに150組以上のメジャーレーベルアーティストの作品を手がけてきたレコーディングエンジニアの高山徹さんです。
今回高山さんは、スタジオライブの一発録音という難しい条件での収録に、DPAのマイクを選択されました。DPAを使用することになった経緯と、使用していただいた感想をお伺いしました。
●今回のMVは、どういう仕上がりをイメージしてレコーディング、ミックスをされたのでしょうか?
スタジオライブの一発録音だったため、ライブ感のある生っぽい躍動感をうまく表現できるよう意識しました。
●どのような経緯でDPAのマイクが選択肢に上がったのでしょうか?
メンバー全員が同じフロアで演奏するため、どうしても各楽器のカブリが多くなってしまします。高橋幸宏さんに至ってはドラムを叩きながらのボーカルなので、その中で音の分離性を確保しつつ、演奏と映像の邪魔にならないマイクを探していてDPAにたどり着きました。
●LEO今井さん、高橋幸宏さんはボーカルに、ゴンドウトモヒコさんはフリューゲルホルンにDPAマイクをお使い頂きましたが、ご使用いただいた印象を教えて頂けますか?また、ほかのマイクもある中でDPAをお選びいただいた理由も教えて下さい。
ドラマーのボーカル用としては、ダイナミックマイクをマイクスタンドで立てることがよくありますが、この場合いくつか問題が発生してしまうことがあります。ひとつは背面からの音の回り込みが大きいこと、もうひとつは演奏の邪魔になり、マイクが口元から離れてしまうことです。この状況でボーカルを上げると、スネアがどんどん大きくなってしまいます。今回、幸宏さんのボーカルに使用した”MMC4018V”は
d:factoボーカル・マイクに使用されているカプセルで、非常に指向性に優れています。このカプセルにグースネックタイプ(15cm)のプリアンプ”
MMP-F15”を組み合わせたことで、とてもコンパクトにセッティングすることができました。スティックが干渉する事もなく口元近くから拾えたので、とてもクリアに録音できました。音質も広域の伸びがとてもスムーズで素晴らしいです。
LEO今井さんのボーカルはドラムが近くにあり、あまり条件が良くなかったのですが、
d:factoは指向性が鋭く、指向性の軸外の音が非常にリニアでした。そのため、コンプとEQでアグレッシブに荒っぽい雰囲気を作り込んでもほかが破綻することなく前に出すことができたことが決め手になりましたね。またスモールダイアフラムの弱点であるフカレの弱さやハンドリングノイズも構造的に工夫されうまく抑え込まれています。
ゴンドウさんの
d:vote 4099もコンパクトなのにナチュラルな音色で、通常のレコーディングで使用されるコンデンサーマイクと比べてもそれほど遜色なく、伸びやかで粒子の細かい音色です。またホーンに直接取り付けるのでマイクとの距離感も変わらず、カブリの多い中でも演奏の細かいニュアンスまで捉える事が出来ました。
DPAのマイクは、指向性の軸外の音がリニア(フラット)であることを強みにしています。軸外の音がリニアでないマイクの音を複数ミックスすると、どんどん音が濁っていきます。今回のような、マルチマイクで被りこみの多いレコーディングだからこそ、DPAの強みが発揮されたようです。
▼使用機材
▼METAFIVE Chemical – Studio Live Version -
【高山 徹】
レコーディングエンジニア
学生時代から都内レコーディングスタジオで働き始め、22歳でフリッパーズギターのメインエンジニアに抜擢される。その後もコーネリアス、くるり、SPITZ、フジファブリック、androp、などバンド系を中心に150組以上のアーティストの作品を手がけ、2008年には「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされる。
METAFIVEの作品は「Split Spirit」以降の「META」「METALIVE」「METAHALF」スタジオライブのREC、MIXを担当している。