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2017年8月24日
フルート奏者である坂元理恵さんのご協力をいただき、フルートのマイキング方法を検証しました。
坂元さんはこれまでPAが必要な現場ではマイクスタンドを使用されていたそうですが、マイクスタンドを立ててしまうと、どうしても動きが制限され、自由なスタイルでの演奏ができなかったり、演奏に集中できなくなることがあったそうです。今後は演奏しながらステージを移動するようなパフォーマンスもしたいとのことで、良いアイデアはないかとご相談を頂きました。
■マイクはどこに装着する?
フルートの収音をするに当たっての最初のポイントは、どこにマイクを装着するか、ということです。マイクスタンドを使わずに収音する場合、DPA製品では、楽器本体にマイクを装着するか、または演奏者自身にマイクを装着するという2通りが考えられます。
①フルート本体に装着する場合 |
[左]d:vote4099のクラリネットへの装着例 [右]4061のサックスへの装着例 ●メリット:ある程度どこにでも装着することができ、常に同じ位置を狙うことができる。
●デメリット:楽器によっては、直接装着することで音が変わってしまう。高価な楽器に直接付けることに抵抗がある。演奏の妨げになる。 |
②演奏者に装着する場合 |
[左]d:fineヘッドセット・マイク [右]4088ヘッドセット・マイク装着例 ●メリット:演奏の妨げにならない。狙う位置は口元のみになるが、常に同じ位置を狙うことができる。
●デメリット:狙える位置が限られてしまう。 |
現物を見ながら坂元さんとお話ししたところ、楽器本体に装着するのは抵抗があるため、ヘッドセット・マイクロホンを試してみよう、という話になりました。メーカー(DPA)としても、フルートのマイキングにはd:fineヘッドセットマイクロホンを推奨しています。d:fineシリーズは軽くて装着感が良く、極めてナチュラルな音質で収音できます。このシリーズは、演劇やスピーチのイメージが強いかもしれませんが、楽器の収音も得意としています。
■無指向性と単一指向性
ヘッドセットマイクを使用する上でのポイントは、マイクの指向性です。
これは非常に重要なポイントで、大きく、「無指向性」と「単一指向性」の2種類に分かれます。
①無指向性のマイク=360度全方向の音を収音する |
●メリット:楽器の発音点以外から出る「ボディの鳴り」なども含め、全体を繊細に捉えることができる ●デメリット:モニタースピーカーや、客席に向いているスピーカーの音も大きく拾ってしまうため、ハウリングが起こりやすい、ステージ上のほかの楽器の音も同様に大きく拾ってしまう |
②単一指向性のマイク=狙った方向の音を大きく、それ以外の音は極めて小さく収音する |
●メリット:狙った位置以外の音はあまり拾わない為、ハウリングが起こりにくい ●デメリット:狭い範囲しか狙えないので、楽器の種類やマイキング位置によっては「ボディの鳴り」を収音できず、楽器本来の音を活かせないことがある |
ソロ演奏、それほど大きく拡声しない、会場にある程度の広さがある、などの条件が揃えば、より自然な音質の無指向性が良い場合もあります。今回のマイク選定は、ほかの楽器と一緒にステージ上で演奏する目的であるため、単一指向性が適切だろうという結論になりました。
■DPAのヘッドセット・マイクロホンはバリエーション豊富
DPAヘッドセット・マイクロホンのバリエーションは実に豊富です!マイクの指向性はもちろん、マイクの位置やブーム長、ヘッドバンドなど、選べるポイントが多くあります。ここから先は、選択できるポイントごとに検証した結果を紹介します。
演奏者の右頬と左頬の両方で演奏していただきましたが、右頬の方がマイクの存在が気にならず、演奏がしやすいとのことです。また持参したPAシステムで確認した限り、左右で音質の差はほとんど感じられませんでした。(楽器の種類によっては、左右で音質に顕著な差が出ることもあると思われます)
無指向性のモデルを使用し、スピーカーの音量を上げていくと、比較的早い段階でハウリングが発生してしまいました。PAシステムのあるステージ上で使用するのであれば、やはり単一指向性が良いでしょう。
上述の通り、PAスピーカーでは無指向性の音質を確認できるほど音量を稼げなかったため、単一指向性との音質比較ができませんでした。ヘッドホンで確認したところ、フルートという楽器においては両者に大きな音質の差は見られませんでした。むしろ、今回の環境では壁の反射音も大きく拾ってしまっていたので、単一指向性の方が総合的に自然で良い音で収音できていました。
①ロングブーム:最も口元に近いため、小さい音もきちんと拾う半面、ブレスノイズがかなり気になります。
②ミディアムブーム:小さい音も拾いつつ、ブレスノイズを抑えられるため、バランスの良い音です。
③ショートブーム:ブレスノイズはかなり減少するものの、音量が稼ぎにくくなります。
ウインドスクリーンを装着すると、ブレスノイズが格段に減少します。今回のような用途の場合は、必ず装着してください。
■ヘッドバンドタイプ:デュアルイヤー/シングルイヤー |
最初にシングルイヤーを装着したところ、違和感もなく快適な装着感との感想でした。しかし、次にデュアルイヤーを試したところ、圧倒的に安定感と安心感があるとのことです。
シングルイヤーは装着が簡単で、ヘアスタイルも邪魔せず設置できますが、動きのあるパフォーマンスをする場合は、デュアルイヤータイプが安心です。
d:fineシリーズには、ヘッドバンド素材・構造の異なる2モデルがあります。
6年ほど前に発売された、比較的新しいモデルです。
4066、4088の装着感を改善するために開発された製品のため、マイクカプセルは同じものを使用しています。耳掛け部分に柔らかい素材を使用したことで、装着感が格段に向上しました。
★坂元さんのコメント★ 「装着感が全くない。長時間使用する場合でも、疲れなくて良さそうですね。」
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古くから愛用されているモデルです。ヘッドバンド部が針金のため、長時間装着すると違和感を感じる方もいるようですが、実際には針金製のバンドを広げてサイズの微調整が可能なため、長年にわたり愛用していただいているミュージシャンも多くいらっしゃいます。
★坂元さんのコメント★ 「硬いけど、痛くはない。むしろ存在感、装着感がしっかりあることで、確実にマイクがあるという安心感を感じられるのでとても良いです。」
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d:fineシリーズは装着感が限りなく少ないことがメリットですが、逆に装着感がしっかりあることがメリットになる場合もあるというのは、我々としては新たな発見でした。
■いろいろ試した結果、坂元さんが選んだのはFID88F00-M2!
坂元さんの総評 |
装着感:安定感が十分にあり、付け心地がとても良い。
音質:小さい音、細かいニュアンスもしっかりと拾っている。大きい音から小さい音まで再現性が高い。ウインドスクリーンを装着したことで、ブレスノイズも低減し、フルートの響きをきれいに収音してくれている。
次に、PAを使用する際にぜひ試してみたいです。 |
■ワイヤレス・システムで使うには?
最後にワイヤレス・システムに関する質問を受けました。
「ステージ上を移動しながら演奏することなどを考えるとワイヤレスシステムを使用してみたいけれど、ワイヤレスシステムを使用すると音が痩せてしまうとか、ノイズが入ってしまうとか、そういったことはないんでしょうか?」
これはよくいただく質問ですが、プロの現場で使用されるワイヤレスシステムであれば、そのような心配はほとんど不要です。事前にPAさんと打ち合わせていただければ、より安心です。
またDPA Microphonesの楽器用マイクやヘッドセット・マイクの場合、別売りのワイヤレス変換アダプターを使用することで、各社のワイヤレスシステムに接続できます。下記ページから、ご使用になるワイヤレスシステムに必要なアダプターをご確認ください。
【坂元理恵】 フルート奏者
桐朋学園大学付属高校在学中より、NHK教育テレビ「フルートと共に」 レギュラー出演。
桐朋学園大学卒業、同研究科を修了。
『第4回日本クラシック音楽コンクール』にて特別賞を受賞。その後「アジア音楽祭」出演、 「ドイツ祝祭管弦楽団」のメンバーとして公演、ウイーンフィル奏者メンバーによる「シンフォニックアンサンブルウイーン」との共演。
1999年まで指揮者 佐渡裕率いる 「シエナ・ウィンドオーケストラ」のフルート奏者を務める。
2001年 宮本亜門オリジナルミュージカル『くるみ割り人形』出演。「ディズニーエンターテイメント・クリスマス・アトモスショー」 レギュラー出演。au携帯CM『嵐シリーズ』出演、芹洋子&デュークエイセス「にっぽんの歌、昭和の歌」全国ツアー、客船ふじ丸日本一周クルーズエンタテイメントチームとして、ステージショウに出演。美智子皇后陛下及び、高松宮妃殿下の御前演奏を務める。
クラシック、ポップス、シャンソン、昭和歌謡~ポエトリーリーディングとの 即興演奏など、幅広い音楽シーンで、また、演奏と同時に朗読劇やMCを交えたステージショウやコンサートなど、ジャンルを超えて新たな音楽活動を展開している。