2023年12月27日
“質感と奥行き感が表現できる4006Aと
芯のあるくっきりとした音色の4011A”
フォーリーアーティスト滝野ますみさんに、DPA 4006A(無指向性)、4011A(単一指向性)をお使いいただきました。学生時代に音楽の録音で4006A/4011Aを使用した経験があるそうですが、フォーリー収録に使用したのは初めてとのことです。今回DPAのマイクを使用した感想は
― 音色がかっこいい…
そして何よりも重要なのは「マイキング」と言い切る滝野さん。
指向性の違いによる使い分けや、実際に使ってみて気づいたDPAサウンドの特長についてお話しいただいています。
本インタビューは記事のほか、動画でもご覧いただけます。動画では、実際に4006Aと4011Aを使用して収録した音をご確認いただくことができます。あわせてご覧ください。
※フォーリーアーティストとは、映画やドラマなどで使用される「生音」を作り出すサウンドエンジニアで、映像に合わせて人物の動作音や環境音を収録して効果音を制作します。今回の収録では、人混みの映像で“手前を歩く人”と“奥から手前に向かって歩いてくる人”を靴や歩く方向、マイクとの距離を変えて表現し、鎧を着たキャラクターが動く音はスコップ2本で再現してくださいました。映像の世界では欠かすことのできない存在です。
― フォーリーアーティスト歴はどのくらいですか?
学生時代は録音を専攻していましたが、インターン先で「フォーリー」に出会って「すごく楽しい!」とすぐ夢中になりました。8年目くらいです。
<今回の撮影場所 角川大映スタジオのフォーリーステージ>
― 学生時代は録音を専攻されていたそうですが、効果音を録るフォーリーとの違いはありますか?
録る対象は違いますが、フォーリーでも音楽録音でも、どちらも大事なのは「マイキング」だと思っています。
イメージ通りの音を作るために、どのマイクが良いか、そして距離はどのくらいか。毎回結構シビアにマイク位置を決めています。録り音が一番大事というのは、音楽と全く一緒です!基本的な考え方は同じだなって思います。
<シビアにマイク位置を調整する滝野さん>
ただフォーリーでは、目的によってマイキングが変わってきます。
大きく分けると「実写(映画など)」「アニメ」「CG」があります。
まず「実写」ですが、日本の映画では同時録音が多いので、セリフに被っている足音が生かされていることがあります。この場合「いかに馴染ませるか」が重要です。
一方アニメはもともとの音がないので、くっきりさせることが多いですが、リアルなアニメだと実写に近い音にすることも。そこでもマイキングは違ってきます。そしてゲームの場合はゲームエンジンの中でリバーブとか部屋感を作るので、そのためにはクリアにくっきりとる必要があります。
目的によってマイキングは全然違ってきます。
― DPA 4006A(無指向性)を使っていただいて、印象はいかがですか?
<左:DPA 4006A 右:DPA 4011A>
すごく使いやすいマイクです!
一般的にフォーリーで、無指向性マイクはあまり使われないのですが、4006Aを使うと奥行き感や距離感がしっかり表現できます。実写にはすごく向いていると思います。音色がかっこいいんですよね。フラットなのに奥行きと厚みがあるので、絵に馴染みやすい。日本映画のかっこいい感じにとても合うと思います。
― 4011A(単一指向性)はいかがですか?
たぶん、私にとっては一番多く使うマイクだと思います。くっきりと芯のある音がゲームにすごく向いています。
フォーリーでは一番良く使われる単一指向性です。先ほど4011Aで鉛筆の音を録りましたが、紙の質感まで分かるような、しっかり芯を捉えてくっきりとした音でした。高い音にも強く、解像度の高い音色という印象です。
<鉛筆で文字を書く音を収録している様子>
― フォーリーには指向性が凄く重要なんですね。
音色でキャラクターを作るという意味でもとても重要です。
楽器は決まった場所から一定の距離で録音しますが、フォーリーはマイクに対して音源が動きます。これは面白いところですよね。
足音を録る場合は実際に遠くからマイクによってまた遠ざかるとか。この時単一指向性のマイクを使えば、軸から外れた場所から来てくっきりとした音になってまた軸の外へ出る、という使い方もできます。
― 4006Aと4011Aは今後主力のマイクとして使えそうですか?
はい!
本当は2本を混ぜるのが一番使いやすいだろうなと思います。
質感と距離感は4006A、そこに4011Aを足して芯をくっきりさせて…など。
この2本のバランスでいろいろな音が作れると感じました。
細かい、精密な音を録るにはとにかく良いと思います。
何よりも音が良いので。
実際に、さっき人混みの映像にあわせて録音をしましたが、手前にいる主人公には4011Aを混ぜて芯をくっきりさせて、後ろの方にいる人の足音は4006Aだけで作るとか。こうすると、同じ質感のマイクなのに主人公がぐっと際立つ、という表現ができます。
<足音を収録している様子。女性はハイヒール、男性は革靴に履き替えて歩き方も変えて収録していました>
― 最後に、DPAで録ってみたい音などありますか?
メタル系を録ってみたいです。
ゲームで鎧の音を作ることがあるのですが、メタルの音は「カーン」とか「キーン」とか高い音だけが強く拾われてしまうんです。DPAの自然な音が録れるという特性で考えると、鎧を着て動いているところのようなガチャガチャっとした音はすごくうまく録れるような気がします!
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インタビュー終了後に、改めてメタル系の収録を行いました。
最初に鎖のジャラジャラとした音を収録したところ「いつも高音でかき消されてしまう中低域がしっかり録れている!」と驚きの様子でした。
さらに、甲冑姿のCGが動く映像の音声を収録しました。2本のスコップをこすったり叩いたりして、鎧が動く音や剣がぶつかる音などを表現されていました。映像に合わせてみると、まるで甲冑姿のCGに息が吹き込まれたようです!
本インタビューで収録した実際の音は、インタビュー動画内で試聴できますので、ぜひご覧ください!
村井 秀清 (Composer・Pf / Shusei Murai)
滝野ますみ
サウンドデザイナー /フォーリーアーティスト
東京藝術大学音楽環境創造科卒、東京藝術大学音楽学部修士課程修了。 株式会社ヴェントゥオノにて映画、ドラマの音響効果、株式会社beBlueにてアニメーシ ョン、ゲーム、CM、インスタレーション、プロジェクションマッピングなどのサウンド デザインを手がける。現在はフリーランスとして活動中。 またフォーリーアーティストとして映画、ゲームの制作に参加している。
neonsound Inc.
Website
http://neonsound.co.jp/
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2023.12
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