ワイヤード・マイクロホン

マイクロホンの仕様を理解する

形 式指向特性周波数特性最大音圧レベル・他ファンタム電源とは近接効果とは


●形式 - ダイナミック型とコンデンサー型
音を電気信号に変換する方式のことで、ほとんどのマイクロホンはダイナミック型かコンデンサー型に分類されます。

ダイナミック型 コンデンサー型 備考
構成 シンプル。振動板に取り付けられたコイルが音を電気信号に変換する。 複雑。振動板がコンデンサーの電極となって音を電気信号に変換する。
耐久性 高い。 低い。 構造の複雑さによるところが大きい。
振動の影響 受けにくい。 受けやすい。 雑音の発生や故障の原因になる。
温度や湿度の影響 受けにくい。 受けやすい。 雑音の発生や故障の原因になる。
電源 不要。 必要。
内部に電子回路が必要なため。
感度 普通。 高い。 感度とは、音を電気信号に変換する度合を表したもの。
自己雑音
(等価雑音レベル)
低い。 内部の電子回路の影響を受ける。 自己雑音とは、マイクロホン自体が発生する雑音のレベル。このノイズのレベルより小さい音は収音できない。
最大音圧レベル 高い。 内部の電子回路の制限を受ける。 最大音圧レベルとは、収音できる最も大きな音のレベル。
周波数特性 普通。 広く滑らか。特に高域が優秀。 周波数特性とは、収音可能な周波数(音の高低)の範囲と、感度の変化を表したもの。
過渡特性 普通。 優秀。 過渡特性とは、音の急激な変化に対して、出力信号が正確に追従する度合を表したもの。
小型化 難しい。 容易。
価格 安価。 高価。 構造の複雑さによるところが大きい。


●指向特性

マイクロホンには、特定の方向から来る音だけをよく収音できるように設計されているものがあります。こうした性質が指向特性で、音が到来する方向に対する感度の変化を指します。マイクロホンの最も感度が高い方向(収音軸)を基準(0゜、0dB)として、周囲360゜を円形のグラフに表します。指向特性は周波数によっても変化しますが、大きく以下のように分類できます。


○無指向性(全指向性)
 どの方向からも同じ感度で収音するもの。

○単一指向性

 一つの方向からの感度が特に高いもの。カーディオイド、スーパーカーディオイド、ハイパーカーディオイドに大きく分けることができます。

○双指向性

 正面と背面、二方向からの感度が特に高いもの。(例)

指向特性


無指向性 単一指向性 双指向性
カーディオイド スーパー
カーディオイド
ハイパー
カーディオイド
特性パターン 無指向性 カーディオイド スーパーカーディオイド ハイパーカーディオイド 双指向性
カバー角度 360° 131° 115° 105° 90°
感度が最も低い方向 -- 180° 126° 110° 90°
背面方向の減衰量 0dB 25dB 12dB 6dB 0dB



●周波数特性

どれくらい高い音から低い音まで収音できるか、また、音の高低によって感度がどのように変わるかを表します。通常は、最も感度が高い方向(収音軸)での測定値を、1kHzの値を基準(0dB)にしたグラフに示します。どの周波数でも同じ感度の特性を“フラット”と呼び、収音した信号は原音に忠実です。周波数によって感度に変化がある特性は、特定の用途に適しています。例えば、2~8kHzの感度を高くしてボーカルの明瞭度を上げたり、低音域や高音域の感度を下げて不要な音を抑えたりします。

(例)

周波数特性が同じダイナミック型マイクロホンとコンデンサー型マイクロホンの音質が違うのは、主に過渡特性(音の急激な変化に対して、出力信号が正確に追従する度合)が異なるためです。


●最大音圧レベル

マイクロホンが収音できる最も大きな音のレベルを表します。収音する音が大きくなるに従って、出力信号には歪みが増えてきます。この性質を使って、高調波歪み(THD)が一定の値(1%など)に達するときの入力音圧レベルを測定して表示します。

 

●等価雑音レベル(入力換算雑音レベル)

完全に無音の状態でも、マイクロホンの出力には僅かに電圧が現れます。これはマイクロホン自体が発生する雑音で、この雑音成分を入力音圧に換算したものが等価雑音レベルです。これより小さい音は雑音成分に消されてしまうので、マイクロホンが収音できる最も小さい音のレベルということになります。


●出力インピーダンス

出力端子側から見たマイクロホン内部の交流抵抗の公称値。出力インピーダンスが低いほど、大きな電力を負荷に供給でき、負荷の変動が出力電圧に影響しません。

●開回路感度

音を電気信号に変換する度合を表すもので、一定の音を収音したときに出力される電圧の大きさで表示します。通常は、最も感度が高い方向(収音軸)から1kHz、1Pa(=94dB SPL)の音圧を加えて、無負荷の出力電圧を測定したものです。





ファンタム電源とは

コンデンサー型などのマイクロホンは、動作に電源が必要です。この電源をマイクロホンに供給する代表的な方法が、ファンタム電源です。通常は12V~48Vの直流で、マイクロホンのバランス(平衡)出力のホットとコールドに+の電圧をかけ、グラウンドを0Vとします。電源の配線が見えないため、ファンタム(幻、幽霊)電源と呼ばれるようになりました。ミキサーやプリアンプなどマイクロホンを接続する機器の多くが、ファンタム電源を供給できます。ファンタム電源は、アンバランス(不平衡)のマイクロホンケーブルでは使用できません。また、ファンタム電源以外の電源供給方法には、AB電源(ホットが+、コールドが0V)、マイクロホンに電池を内蔵する方法、専用の電源ユニットや配線を使う方法などがあります。





近接効果とは

指向性のあるマイクロホンを音源に近づける(約30cm以内)と、低音域が強調される現象のこと。口元で収音するボーカル用などのマイクロホンは、近接効果で強調される低音域を抑えられる周波数特性に予め設計されています。低音域を抑えるフィルタを内蔵し、スイッチで切り替えられるマイクロホンもあります。



マイクから口の距離が最も離れている時の特性が一番下の実線、最もマイクに近づいたときの特性が一番上の波線で示されています。マイクに近づくほど、低域が強調されているのが分かります。


Copyright(c)Hibino Intersound Corporation.All rights reserved.